私の靴は「快適そうだ」と言われるよりも
「情熱的でセクシーだ」と言ってもらいたい。
私は快適と幸福は全く別のものだと考えている。
【クリスチャン・ルブタン】

クリスチャン・ルブタンは世界に熱狂的なファンを持つ靴ブランドです。ヒールが高く、靴の裏地が真っ赤に染められたレッド・ソールが特徴で、1足10万円を超えるような靴です。決して履きやすく快適な靴ではありません。1日履けば、足に痛みが出るでしょう。しかし、快適ではなかろうとも、自分にルブタンの靴が似合うように自分を磨き、格好良く可愛らしく自分らしく歩こうとすることに、幸福があるのだとクリスチャン・ルブタンは言っています。

仕事においても同じことが言えると思います。「幸福と快適は全く別のもの」と僕は思っています。ある程度仕事ができるようになると、日々の業務をそつなくこなすことができる「快適」が手に入ります。しかしそれは「幸福」ではありません。「幸福」とは、ジリオンのプライドでもある、Make The Greatest Momentであり、自分が定めた目標を達成した時に初めて得られるものだと思います。

仕事を考える上で、WILL CAN MUSTという考え方があります。WILLは「やりたいこと」、CANは「できること」、MUSTは「やらなければいけないこと」です。快適とは、WILLとCANばかりをやること。やりたいことやできることしかしない状態です。この状態では、幸福にたどり着くことはできません。やらなければいけないことをやり続けた先に、快適とは別次元の幸福があるのだと思います。ジリオンには「矢印をお客さまに向けよう」という言葉がありますが、これも同じです。WILLやCANを求めることは、矢印が自分に向いた状態。自分に向いた矢印は、お客様には刺さりません。MUSTとは矢印を自分の外に向けること、お客様や仲間に向けるということです。

矢印の向きを変えて成長を遂げたという観点で思い浮かぶのは、加田です。加田は、目黒店オープンの半年後に入社してきました。前職はアパレルで飲食の経験はゼロ。当時の加田の目黒店でのパフォーマンスは酷いもので、毎日みんなから激を飛ばされていました。一緒に働いていた創業メンバーは、加田に「やるべきこと」を求めました。「目黒の奇跡を創る」という目標を掲げ、快適よりも幸福を求めるチームだったからです。矢印をお客様に向けて、やるべきことをやりきれば、お客様は感動して100%リピートしてくれる。加田は必死になって「やるべきこと」に向き合いました。学芸大で店長を務めたあたりから、ひと通りの仕事ができるようになっていました。

しかし、その後中目黒店の店長となった時、加田は壁にぶつかりました。学芸大よりも広く二層のフロアを持つ店舗のマネジメント、本部ではじまった新しい会議体。経験したことのない仕事に直面していました。何よりも人のマネジメントで加田は苦労しました。当時の中目黒店は矢印が「自分」や「自分たち」に向いていたのです。優しい加田は、メンバーの「やりたいこと」をやらせようとしました。結果。メンバー同士の「やりたいこと」は衝突し、「やるべきこと」に向き合わないため、店のサービスレベルは下がり、チームは崩壊していきました。加田は中目黒店の店長から外れ、目黒店に異動になりました。「やりたいこと」しかやらなかったメンバーは、後に皆辞めていきました。

当時を振り返り、加田は「自分はこんなにやっているのに」という意識があったと言います。できないことばかりで、何もかもがうまくいかない。会社からも評価されず、仲間からも信頼されない。ただ、中目黒店から離れ、目黒店に移り、店長という立場からも外れた加田は、決して腐りませんでした。目黒店で自分の「やるべきこと」に向き合いました。加田は目黒店に移ってからの仕事が「楽しかった」と言います。「やるべきこと」に向き合って、チームとして高いパフォーマンスを出し、お客様に喜んでもらう。それこそが幸福だと、改めて感じたのではないでしょうか。

中目黒店の頃の加田を「優しい」と表現しましたが、実際には「甘い」店長だったと思います。「やりたい」を優先することは、一時的にはメンバーに喜ばれます。しかし、それは「快適」ゾーンにいることを許容してしまっているだけで、「幸福」への険しい道を避けているだけなのです。エリアマネージャーになった加田は、「やりたいことだけやればいい」とは決して言わないはずです。メンバーを「やるべきこと」へと導けるマネージャーです。

店長や料理長には、わかりやすい責任がありますが、ジリオンで成長している人たちは、みんなそれぞれの立場で責任を背負っています。それは店のため・仲間のためかもしれないですが、何よりも「自分の人生に対する責任」を背負っています。自分の未来のために”What Can I Do?”と問い、目先の楽を捨てて、自分がやるべきことに真摯に向き合っています。どんなに疲れていても電車でご老人に席を譲ることは、偽善の精神だけでできることではありません。自分の在り方を自分で決めている人だけが、思考を行動に変えることができるのだと思います。

もしもあなたの今が快適で楽ならば、それは幸福には向かっていないのかもしれません。快適とは、できることややりたいことだけをやること。幸福とは、自分が定めた目標に向かってやるべきことを必死にやりきって初めて手に入るものです。

改めて、今あなたがいるチームは、「やるべきこと」に向かうチームになっているでしょうか。「やりたいこと」「できること」だけをやっているチームになっていませんか。店長も料理長もメンバーもアルバイトも、全ての立場の人が改めて自分に問うてみてほしいと思います。私もジリオンの経営者として、ジリオンで働く一人ひとりがMake The Greatest Moment へと向き合える環境づくりを目指します。

少し加田を褒めすぎました。加田が一皮むけたのは、加田の頑張りはもちろんですが、周囲の仲間たちの支えも大きかったと思います。店長や料理長というマネージャーたちは、一緒に働く仲間が、快適ではなく幸福へと向かえるように、支えてあげてください。誰しも時には足が止まることもあります。誰かが辛い時、支えられる組織でありたいと思います。そして加田は、もっと上のレベルに行けるので、もっともっと頑張ってください。
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